「フリムン徳さんのアメリカ便り」第76号
「夜に光る道」
                                    

2012.7.20

今の世の中、舗装されていないドライブウェイは珍しい。
フリムン徳さんの土地の入り口から家まで牧草地の中を走るドライブウェイは
未舗装である。少ない年金生活のフリムン徳さんには、この200メートルの
ドライブウェイをアスファルトで舗装するには高すぎる。訪ねてくる人も少な
い山の中の生活はこれで良いと思っている。第一、公道でもない私有の牧草地
を走る道は舗装されていない方が自然と思う。今の世の中、どこの道を走って
も、アスファルトで舗装されている。地球が顔をアスファルトで塗りたくられ
て、息できないと怒っているではないか。

 フリムン徳さんの未舗装の道は生きている。
降った雨は地中に染み込みながら流れていく。地球は、未舗装の道から、水を
もらい、顔を洗い、太陽光線を直に受け、空気も直に吸う。フリムン徳さんの
ドライブウェイには、ヘイ(牧草)が生え、カリフォルニアポピーも咲く。花
が咲く未舗装の道、これが自然というもの。

 アスファルトで埋め尽くされた道は死んでいる。アスファルトで舗装された
街に雨が降ると、雨水は地面に染み込む事が出来ない。大きなドレインでたち
まち海まで流れて行く。街の雨水、生活排水で、海水の量は増え、さらに地球
温暖化で北極、南極の氷が解け、一層、海水の量は増える。そのうち陸地は沈
むかも知れない。

 未舗装の道は高いハイヒールを履いた別嬪さんが歩くには良くない。別嬪さ
んは歯を食いしばって、足元を確かめ、足に力を入れながら歩かないとすぐに
こけるかも知れない。別嬪さんが歯を食いしばった顔は別嬪台無しである。
でも、野生の動物達には良い道のようである。未舗装の道を歩いてみると、野
生の動物、植物の生き様を知ることが出来る。物事をよく観察できる、いや観
察するようになる。文章(エッセイ)の書き方を勉強しているフリムン徳さん
には非常にためになる。

 人間の子供をも襲うと言われるカヨーテ(狼の一種)がフリムン徳さんの未
舗装の道を便所にしているらしい。どうも牧草の中で用を足すより、楽に用が
足せるようだ。2週間に1回ぐらい、道の真ん中に糞のお土産を置いている。

 カヨーテの糞の中に珍しいものを発見する。形は犬の糞に似ているが、何か
の動物の毛で覆われている。食べた野うさぎか、野ねずみか、リスか、モグラ
かのどちらかに違いない。それだけではない、もっと変わったのも混じってい
る。これはフリムン徳さんにとっては大発見だった。木の実の種がたくさん混
じっている。肉しか食べないと思っていたカヨーテが木の実を食べるのである。
そんなこと、考えたこともなかった。猫が緑の草を食べる。鶏が砂も食べる。
フリムン徳さんが酒を飲む。それぞれに何か理由があるか。それも自然の一つ
の営みか。

 この未舗装の道はフリムン徳さんの車のためだけのドライブウェイではない。
ウズラの大群のドライブウェイでもある。ウズラは牧草地の中の牧草の穂を食
べた後、このドライウブウェイを40羽から50羽のグループで、行進して、
我が家へ帰るのである。フリムン徳さんの車がその行進の後ろに近づいても、
すぐには道を譲ってくれない。車との間合いを計算しつつ、行進のスピードを
速め、その最高速度の競歩でも、車にひかれると分かったとき、ついにフリム
ン徳さんに道を譲り、車のまん前から飛び立つ。走る車のまん前から、40羽、
50羽のウズラの大群が一斉に、飛行機のように離陸するのである。その瞬間
を写真に撮ったら、ええ絵になりそうだが、カメラに疎いフリムン徳さんはま
だ実行していない。

 ところが、雨が降ると未舗装のドライブウェイは、ええ絵どころではなくなる。
降った雨は喜ぶようにして、この道を川のように流れる。後には大きな凸凹が
残ることになる。2、3日も雨が降り続いた後は、注意深く凸凹を避けながら
ドライブしなければならない。昔懐かしい言葉の「道普請」が必要となるので
ある。今の人は「道普請」という言葉は知らないかもしれない。昔、フリムン
徳さんが小さい頃、喜界島の道は全部未舗装だった。大雨の後は、村の人が総
出で、「道普請」をした。未舗装の道があったからこそ、村人達の助け合い精
神が生まれたように思う。「道普請」は、コンピューターに向かってエッセイ
の勉強ばかりをしているフリムン徳さんの身体を使う運動の一つであり、仕事
でもある。
 
 この未舗装の道は懐かしい昔も思い出させてくれるが、地球が生きている事
も教えてくれる。山の中腹に建っているフリムン徳さんの家から、暗闇の夜、
この未舗装のドライブウェイを見下ろすと、光っている。アスファルトの道は
夜光らないのに、未舗装の道は光っている。地球の神秘を見せてくれる。星の
ように地球も光っているのだと、証明してくれている。
                           フリムン徳さん

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