「この世の楽園」第78号
                                    

2012.10.10

「フリムン徳さんのアメリカ便り」第78号 『この世の楽園』
 カリフォニアには、素晴らしい“この世の楽園“があります。ここの会員に
なると生きるための心配がいりません。でも死ぬ心配はあります。

 三食無料、二人部屋だが無料、テレビ付き、シャワーも無料、衣服の洗濯必
要なし、どんな病気にかかっても医療費無料、交通事故の心配なし、信号機無
し、減量保証。働きたくなければ、働かなくてよし、働きたければ、仕事はい
つでもあります。もちろん給料は払います。ただし、安いです。ここカリフォ
ニア州の会員は、アリゾナ州や他の州の“この世の楽園”の会員にはなりたく
ないという。待遇や施設がカリフォニアに比べたら劣るからだ。

 至れり尽せりだ。運動施設もある。野球場、テニスコート、バスケットボー
ルコート、卓球場、バレーボールコートなど何でもある。使用はもちろん無料。
大きな病院もある。フリムン徳さんが一番興味を持ったのは確実に減量保証し
てくれることだ。どんな肥満体でも必ず、すっきりした理想の身体に戻ること
間違いない。お太りで悩んでいる方、減量で苦しむ女性には最適なところだ。
お太りさんを大量生産しているアメリカの食生活、この楽園の献立を真似たら
どうでしょうか。

 こんなに至れり尽せりの無料サービスをして元がとれるのだろうか。しかし、
この楽園はアメリカ建国以来200年以上も破綻することもなく続いている。この
“この世の楽園“はいったいどこにあるのか。アメリカ全国に数え切れないほ
どある。カリフォニアにも数え切れないほどある。私は実際に見に行ったこと
はない。会員にならないと中は見学できない。このところ会員が増えすぎ
て、まじめな会員は会員資格を取り消されて、追い出されるのが増えていると
いう。

 先日、隣のニックが車の修理に来てくれた。その時、彼からこの“この世の
楽園“の話を聞いた。
 ニックは高い家のローンを払い、カレッジへ行っている二人の子供の、車の
ガソリン代や保険料を払うために、土曜日、日曜日にアルバイトまでしている。
もちろん彼の妻も二つの仕事を掛け持ちで頑張っている。彼は州の仕事をして
いるが、不況で、州は彼の給料の20%をカットしたという。日本の公務員給与
の削減はどうなっているのか。彼の生活は苦しそうである。皮肉なことに、ニ
ックは今“この世の楽園”に住んでいる人達の建物のメインテナンス(施設の
整備修理)として働いている。

“この世の楽園”では、ほとんどのものを無料で利用でき、なんでも完備だか
ら、楽園内には店はない。あるのは飲み物の自動販売機だけだ。でも何でもほ
しいものは金さえ出せば内緒で買える。しかし、内緒の贅沢品は高い。たとえ
ば、100ドル前後の携帯が500ドル(40,000円)、タバコが1箱25ドル(2,000円)、
と贅沢品は楽園外より目の飛び出るほど高い。一方、給料はこの世では考えら
れない安い時間給、1時間25セントから1ドル25セント(100円)。贅沢品を買い
たければ、長い時間をかけてせっせとお金を貯めなければならない。

 店がないのに手に入れたい贅沢品はどこから入ってくるか?
 それは塀の外から投げ込まれる。これで皆さん、お分かりでしょう。“この
世の楽園”は刑務所です。刑務所の敷地の中には面会に来る人が泊まれるアパ
ートまでもあり、受刑者は面会人と一緒にそのアパートで過ごすこともできる。
二人部屋の鉄格子ドアの鍵は各人が持っていて、昼間はいつでも出入り自由。
夜はポリスが外から別の鍵をかけて開かないようにする。

 助べーのフリムン徳さんは、セックスはどう処理するのか聞いてみた。男同
士はゲイになり、女同士はホモになり、何の不自由もないという。ああ、怖い、
ああ、怖い!! なんぼ助ベーのフリムン徳さんでもこれだけは御免蒙りたい。
“この世の楽園”は異様な社会だ。

 部屋にはヒーターや冷房はないけど、扇風機はある。冬の寒い日は身を寄せ
合い、抱き合っておれば、ヒーターもいらないのだろう。生活費、医療費が要
らない上に、冷房なんか贅沢すぎる。扇風機で十分。この建物のメインテナン
スのニックは、夏の暑い日など華氏120度(摂氏49度)以上もある蒸し風呂みたい
な天井裏で、電気配線の修理もする。そんな時に、下の部屋で受刑者が回す扇
風機の涼しそうな音が一番憎らしいと言う。

 人権の国アメリカは囚人を大事にしすぎだ。刑務所は、“この世の楽園”や。
 フリムン徳さんが“この世の楽園”の会員になるにはどうしたらいいか。一
番簡単な方法は、夫婦喧嘩をして、少し嫁はんの体に触れる。嫁はんがポリス
に通報する。それで十分や。
 ニックはぼやく、
 「俺は悪いことをした連中の幸せのために汗水流して働いている。時々、
頭がおかしくなりそうやでー」。
                         フリムン徳さん

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